イオン注入の材料調整

イオン注入システムの信頼性やイオンソース、ビームラインの交換部品の寿命がグラファイトや高融点金属の特性で大幅に改善。

イオン注入時にはドーパントイオンを加速し、通常は単結晶シリコンウエハーに注入して、そのバルク特性に影響を与えます。たとえば、層分離用の埋め込み層の形成、局所的導電性の向上、格子の変形による電子移動度の増大などです。ドーパント材料は通常、ホウ素、ヒ素、リン、インジウム、またはゲルマニウムです。

イオンビームのエネルギー、方向、均一性は数多くのプロセス変化に対して再現可能でなければならず、長時間にわたって一定の運転条件に置かれても変動してはなりません。プロセスの安定性と寿命は交換部品の形状や材料の特性に強く影響されます。すなわち、交換部品が長くその形状を保持すれば保持するほど、プロセスの安定性や再現性が増すのです。

注入機システムの多くの部品は長時間にわたってプロセスガスやイオンビームと接触します。システム内で強力な化学的力や電気機械的力が作用すると、ビームラインに沿って部品材料の浸食、再沈着、移動が発生することがあります。そうして部品が消耗すると、プロセス精度が低下し、機器の故障が早まる可能性があります。交換部品は、ウエハーが損傷しないように、また、計画外の生産停止が生じないように、早めに交換する必要があります。 計画外の生産停止が生じると、大量生産の工場ではそのたびに何万ドルもの損失が生じる恐れがあります。

イオン注入機のビームラインでは、グラファイトや高融点金属の材料を多く使用しています。それらの化学、熱、電気、機械的特性は、システムの寿命を延ばす上でとくに重要です。個々の交換部品にとって申し分のない材料を選択するには、これらの材料の特性を十分に知り尽くしておく必要があり、そこがまさに、高融点金属の分野で90年以上の経験を積み、グラファイトやイオン注入についても30年以上の専門的経験を持つPlanseeの材料エキスパートたちの出番です。「単なる交換部品にとどまらない交換部品を」そのモットーのとおり、PlanseeはOEM部品の設計だけでなく、そこに使用される材料も改善しています。

グラファイトの3つの品質等級。選択肢をより広く。

 

他のメーカーはイオン注入機のどのグラファイト製交換部品にも同じ品質の材料を使用しているかもしれません。Planseeはイオン注入機の多様な需要に対応した3種類の完全に整合した品質等級のグラファイトを使用します。これらの整合したグラファイトの等級には、次のようなものがあります。ストラクチャーグラファイト、アパチャーグラファイト、スペシャルティーグラファイト。

それでは、どうして3つのグラファイトの品質等級が必要なのでしょう? ビームラインのグラファイトに求められることは、一様ではないからです。たとえば、多くの開口部は熱伝導性が中から高で、機械的安定性に優れたグラファイトを必要とします。ソースのコンポーネントの場合は、ソース全体を通して温度ができるだけ一定に保たれる必要があるので、熱伝導性が重要な意味を持つ可能性があります。

グラファイトの3つの品質等級の違いは主に粒径、硬度、強度にあります。 ストラクチャーグラファイトは粒径5-10 µmのグラファイトです。この材料は、通常の運転条件ではビームが当たらないところに使用します。 たとえば、フレームやカバーの取付部に使用します。

アパチャーグラファイトはその名のとおり、主に開口部に使用します。アパチャーグラファイトは粒径~5 µmで、ストラクチャーグラファイトより硬度と強度が50%ほど高くなっています。アパチャーグラファイトはとりわけ均質にできています。この均質性のために、たとえ材料損失が避けられない場合でも、この材料を使用すると、ストラクチャーグラファイトの場合より損失が一様になります。その結果、注入プロセスがかなり安定します。

スペシャルティーグラファイトでは、均質性がさらに増します。粒径1-2 µmの超微細粒のこの材料はアパチャーグラファイトより硬度と強度が50%ほど増します。このグラファイトがとくに使用される分野は、静電レンズの形状や耐浸食性が重要な意味を持つ抽出光学系や質量分解能測定に使用される開口部です。スペシャルティーグラファイトは、材料損失がきわめて小さいので、質量分析後もあまり粒子形成を起こさずに使用することができます。

3つの品質等級のグラファイトは、機械的特性だけでなく、電気的特性や化学的特性も異なります。一部のスペシャルティーグラファイトは、表面がとりわけなめらかなのに加えて、良好な電気伝導性も示すことがあります。引出電極では、スペシャルティーグラファイトはグリッチというアーク作用を減少させることができます。アプリケーションによっては、グリッチを完全に排除することができるかもしれません。アパチャーグラファイトは熱伝導性がとりわけ良好で、イオンソースの温度分布を一様にすることができます。3つの品質等級のグラファイトは、いずれも純度が高い点が共通しています。いずれの場合も半導体産業で求められている5 ppmの最高純度レベルが保証されています。実際の測定値は、標準的には超高純度の2 ppmに達します。

Plansee並みの厳しい品質基準を満たしているグラファイト注入部品のサプライヤーはほとんどなく、Planseeはどの部品にどの材料を使用しているかも明らかにしています。Planseeのイオン注入機用の新しい材料の開発を担当しているThomas Werninghaus博士はこう言っています。「当社の場合、イオン注入のように高精度のプロセスについては、透明性を確保するのは言うまでもありません。当社は、個々の交換部品のドキュメントの中で、どのグラファイトの品質等級を使用しているかを明確にしています。」

たとえば、米国製のある製品では、より高品質の材料を使用しても採算が取れるわけも明かしています。この場合には、Planseeのチームが注入機のフライトチューブの材料の選択とともに部品とアセンブリーの設計も最適化しています。 結果:Planseeの測定によると、フライトチューブの寿命を倍に延ばすことができました。

コストを削減しながら高品質の製品をお届けするために、Planseeはお客様に合わせて異なる品質のグラファイトを組み合わせています。最も脆弱な部品には最高品質のグラファイトを使用し、それほど重要でない部品には標準的な品質のグラファイトを使用しています。それをThomas Werninghaus博士は巧みにこう表現しています。「レースに出るならフェラーリが必要でしょうが、買い物に行くだけならファミリーサルーンで十分ですよ。」

たとえば、Planseeは安価なストラクチャーグラファイト製の一体型アパチャーをより高品質のアパチャーグラファイトやスペシャルティーグラファイトで補完しています。それらは硬度や強度が重要なところ、つまりイオンビームの近くに使用しています。これにより、摩耗が減少し、開口部の寿命が延びます。

Planseeがグラファイトの特性を細部の細部まで理解していることは、設計や製造の面でも生き、この上なく複雑な幾何学的形状の部品でも製造することができ、複数の部品から成る複雑なアセンブリーも単純化して取り付けやすくし、部品コストを引き下げることができています。

合金で最高の性能を

 

純度や材料特性は、イオン注入機のタングステンやモリブデン製の部品にとっても何より重要なものです。材料の産地が頻繁に変化すると、使用する材料の品質も変化し、結果的にプロセスが不安定になったり、ダウンタイムが予測できなくなったり、部品の使用量にむらが生じたりします。そのわけは簡単で、材料の特性が変化すると、部品とその厳しい製造環境(高エネルギー、高温、化学反応性)との間の複雑な相互作用も変化するからです。 Planseeは先を見越して原材料の供給を確保してきました。姉妹会社のGlobal Tungsten Powdersや世界最大のモリブデン処理業者Molymetへの大々的な投資を通して、長期的な供給の安定性と一貫した品質を確保しています。

純度の高い原料を一貫して安定的に確保することが、材料を専門とするPlanseeが最終的に目指していることではありません。Planseeがイオン注入機で目指している目標には、材料をどう組み合わせるかという問題も含まれています。Planseeでは、専従の研究グループが注入機の性能や部品の寿命を改善することを目指した新しい合金や複合材料を開発しています。なかでも成功した複合材料のひとつがタングステンランタン酸化物(WL)であり、この材料はすでにPlanseeの多くのお客様が採用してイオンソースのハロゲンサイクルの影響の低減に成功しています。では、ハロゲンサイクルとは何のことでしょう?

イオンソースへのホウ素、ゲルマニウムなどのドーパントの供給には、三フッ化ホウ素(BF3)、四フッ化ゲルマニウム(GeF4)などのハロゲン含有ガスが広く利用されています。これらの分子は、イオンソースのプラズマ内で分裂してイオン化します。たとえば、BF3からB+を生成すると、BF2、BF、B、Fとそれらのイオンが発生します。

分裂したフッ素原子はタングステンと反応し、ハロゲン化タングステンを形成します。ハロゲン化物の分子は、陰極の表面で最も高くなる熱エネルギーによって分解されます。 フッ素はプラズマに戻り、タングステンはソースの最も高熱の領域に沈着します。このプロセスがハロゲンサイクルと呼ばれ、イオンソースの比較的低温のタングステンコンポーネントの急速な浸食を招き、ソースの他の領域への大量のタングステンの沈着につながります。そして、短絡が生じ、ソースが故障することもあります。

Planseeはハロゲンサイクルを減少させるために、設計を改良するとともに新しい材料を導入しました。

Planseeはハロゲンサイクルを減少させるために、設計を改良するとともに新しい材料を導入しました。イオンソースの比較的低温の領域でタングステンを複合材料WLに置き換えると、ハロゲンサイクルが大幅に減少しました。この材料は、適切な場所に適切な品質のグラファイトを使用すると、チャンバー内の温度分布を均一にします。「お客様は当社のWL部品をとても喜んでくれています。最初に現場から上がってきた数字によると、WLを使用すると、適切なアプリケーションでは部品の寿命が最高で150%まで延びることがわかっています。」Werninghaus博士はそう説明しています。

Plansee High Performance Materials

 

Plansee High Performance Materialsは、モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ、クロムコンポーネントの分野のエキスパートです。Planseeの合金、複合材料は、従来の材料では対応できないエレクトロニクス、コーティング技術、高温炉の分野で本領を発揮します。

Planseeは米国と日本でふたつの最先端の製造施設を運営し、タングステン、モリブデン、タンタル、グラファイト、セラミックスから数多くの多様な交換部品を製造しています。Planseeは、システムの性能が改善・強化される設計に主眼を置き、世界のあらゆる大手メーカーのOEM規格に正確に従って製品を製造しています。「Plansee Advanced Standard」のブランドで販売しているPlanseeのアップグレードソリューションは、半導体業界全体で、その寿命の長さ、取り扱いの容易さ、保守費用の少なさ、コストの安さで広く知られています。

皆様のイオン注入のニーズについては、世界中に展開するPlanseeの営業チームや国際的な製品エンジニア・デザイナーのチームがオンサイトでお話をうかがい、ソリューションを提供いたします。詳細についてはこちらをご覧ください。 イオン注入用グラファイト・金属コンポ-ネント