水素社会実現に向けて

そのまま設置できる状態で納入される極薄パラジウム層の水素分離装置でそれを可能にしました。つまり、天然ガスからの純粋な水素の分離です。

これまでは、採算ベースの水素生産方法は水蒸気改質(Steam reformation)しかありませんでした。大量の水素ガスを生産するとなると、この製法を採用するにしくはありません。しかし、それほどの量を必要としないユーザーの場合には、水蒸気改質は経済的ではありません。これまでは、消費量が毎時500立方メートル未満のユーザーはトラックから水素の供給を受けなければなりませんでしたが、これは複雑かつ費用のかかる方策です。

Linde(リンデ)社は、新たに開発したシステムにより、大規模な水素生産とガスボンベを用いる小口消費者への供給とのギャップを埋めることに成功しました。膜改質(Membrane reformation)法を用いることで、顧客は現場に純粋な水素で今度は確実に供給されることができます。膜改質法の実用化に成功するための鍵は、そのまま設置できる状態で納入される水素分離装置です。ことのほか微細なパラジウム層でコーティングされた多孔質焼結特殊合金製のいくつかのチューブで構成されています。このパラジウム薄膜はひとつの際だった特質を備えています。つまり、水素ガスだけを通し、他のガスは通さないことです。

とはいえ、純粋な水素を抽出することを可能にする前に、設計技術陣はもうひとつの課題を克服しなければなりませんでした。動作時に部品にかかる非常に大きな負荷をどうするかという課題です。チューブ状の改質装置に投入される混合気体の温度は、摂氏600度ほどにもなります。キャリアチューブは、鉄-クロム製で、このような高温に運転時間20,000時間以上にわたって歪むことなく耐える必要があります。さらに、キャリア材料とラジウム層は、加熱時および冷却時にミクロ組織内に応力が生じないように膨張・収縮ができる限り少なくなければなりません。また、さらに、鉄-クロム製チューブとパラジウム層の間には、両材料の特性間の相互干渉を防止するため、鉄のクロムチューブとセラミックのセパレータ層を挿入することも必要でした。

原理としてはこれに尽きます。ところが、やはり、悪魔は細部に宿るもの(好事魔多し)。問題は、2つの主な目的を達成できるように製造工程を設計することにあります。ひとつの課題は、パラジウム層が水素以外のあらゆる元素を絶対に通さないようにすることにあります。それゆえ、バラジウム層は他のあらゆるガスに対する有効なバリヤとしての役割を果たす上で充分に厚くガスタイトでなければなりません。しかし、設計技術陣が追求している目的はほとんど真逆です。つまり、彼らにとっては、この層は薄いに越したことはないのです。層が薄いほど、それだけ多量の水素ガスが膜を通過します。そして、流量が多いほど、それだけ効率的なシステムということになります。

したがって、プランゼーのコーティングのエキスパートにとっては、目的は水素ガス流量を極大化できるガスタイトな層を開発することにあったのです。結果として、厚さ8マイクロメートルのパラジウム層により、純度99.95パーセント以上の水素を生産することを可能にしています。この純度レベルは将来さらに改善されると見込まれています。このこともあって、水素の純度に関する要求がますます厳しくなっている顧客層にとってこのシステムの魅力が高まります。

Linde社とプランゼー間の広範囲にわたる開発パートナーシップの成果であるこの水素分離装置は、水素ベースの経済(水素エネルギー社会)の実現に向けたさらなる構成要素基礎です。プランゼーの多孔質金属基板は、高温燃料電池への電気・ガス供給用キャリア材料としてすでに長年にわたる使用実績があります。