クロム

クロムは軽い銀白色の金属です。名前は を意味するギリシア語「クロマ」から来ています。さまざまな酸、塩基、高温ガスに対する耐食性にずば抜け 、あらゆる種類の保護コーティングに広く用いられています。燃焼設備では、個々の部材の寿命を延ばす耐摩耗性コーティングに使用されています。また、高温燃料電池の構成要素としてもみごとな性能をを発揮します。そのほか、電気製品の部品や宝飾品を輝かせる 装飾用コーティング としても利用されています。

硬質材料層用スパッタリングターゲット
硬質材料層用スパッタリングターゲット
SOFCのインターコネクター
SOFCのインターコネクター
原子番号24
CAS番号7440-47-3
原子量51.996
融点1 900 °C
沸点2 672 °C
原子容0.012 [nm3]
20°Cの密度7.15 [g/cm3]
結晶構造体心立方構造
格子定数0.28847 [nm]
地殻中の存在量200.0 [g/t]
用途
用途
クロム合金
合金
特性
特性
発見から精製まで
発見
粉末治金法
粉末治金法

純度

品質はおまかせください。金属粉末から最終製品まで、プランゼーは自社でクロム製品を生産しています。投入材料には最高純度のクロム粉末しか使用していません。だから、お客様にも超高純度材料のよさをおわかりいただけます。

プランゼーのクロム(HP)は純度99.8 %であることを保証いたします。
化学分析による結果、それ以外の元素は以下が含まれます。

元素最大含有
典型値
[μg/g]
Fe1 500
Mo50
W50
Si500
O1 000
N200
C300
その他300

プランゼーのクロム(UHP) は純度99.95 %であることを保証いたします。
化学分析による結果、それ以外の元素は以下が含まれます。

元素最大含有
典型値
[μg/g]
Fe300
Si100
W50
Mo50
C100
O300
N200

摩耗に強く、はえる外観

これだけ優れた特性を示すプランゼーのクロムが、きわめて特殊な産業用途、たとえば各種表面処理のコーティング材料に使われても不思議はありません。

可動部品に窒化クロムの硬質材料コーティングを施すと、摩耗磨滅から確実に保護できます。しかも、時計も金具類もり、輝きます。また、腐食を防げるのもクロムの特長です。

純クロムそれとも合金?

プランゼーはいかなる用途でも完璧に機能するクロムをお届けします。各種の合金を加えることによって、以下の特性を自由にコントロールすることができます。

  • 物理的特性(融点、蒸気圧、密度、導電性、熱伝導性、熱膨張率、熱容量など)
  • 機械的特性(強度、破壊挙動、延性など)
  • 化学的特性(耐食性、エッチング性など)
  • 加工性(機械加工性、成形性、溶接性など)
  • 構造・再結晶特性(再結晶温度、脆化特性、時効効果、粒度など)

これ以外のクロムやクロム合金の各種の特性も、プランゼー独自にカスタマイズした製造工程を用いることにより、幅広く調整することができます。

材料名 化学組成(重量%)
Cr (High Purity) > 99,8 %
Cr (Ultra High Purity) > 99,95 %
CFY < 95 % Cr
5 % Fe
Yttrium
ITM < 74 % Fe
26 % Cr
(Mo, Ti, Y2O3)

CFY(クロム-鉄-イットリウム)

CFYは鉄含有率5%のクロム合金です。おもに燃料電池インターコネクターに使用します。CFYの膨張率は燃料電池の電解質の膨張率に正確に合わせます。CFYの熱膨張率は下表のとおりです。

温度 [°C] 300 400 500 600 700 800 900
線熱膨張率[10-6K] 8.88 9.19 9.5 9.8 10.1 10.5 10.8

850°Cまでの使用温度では、選択した材料の耐食性が決定的にものをいいます。とりわけ、CFYのインターコネクターは空気中酸素や高い水素濃度に耐えられなければなりません。

材料は、高い動作温度で大きな機械的応力にもさらされます。プランゼーのCFY合金は高温での安定性に優れ、耐クリープ性も良好です。つまり、プランゼーの材料はどんなときにも安定を保ち、変形しにくい性質を持っています。

ITM(鉄-クロム-イットリウム)

プランゼーのITMはクロム含有率26%で、微量の酸化イットリウムも含む鉄合金です。この合金は携帯用SOFC(固体酸化物型燃料電池)のインターコネクターやメタルサポートセル(金属支持型セル)の支持体に使用されます。どちらの用途でも使用する合金は同じですが、その特性は用途によって大幅に異なります。

インターコネクターに使用するITMは焼結して完全に気密にした上で圧延します。これは燃料電池で支持体としても接点としても使えます。インターコネクターは耐食性を持ち、800°Cまでの温度で寸法が安定していなければなりません。それが酸化イットリウムをドーパントとして使用することによって可能になります。

メタルサポートセル(金属支持型セル)の支持体は従来から携帯用燃料電池に使用されてきたセラミックキャリアに取って代わりました。この用途の場合、プランゼーはITM合金を特別に多孔質になるように焼結します。それで初めて、燃料電池に必要な最適なガス透過性が得られるのです。ITM支持体はセラミックより起動・停止サイクルの温度変動で生じる応力によく耐えられます。また、振動や運動に対する機械的な安定性でもセラミック材料より優れています。

プランゼーのITMは水素発生用蒸気改質装置の部品にも使用することができます。水素に対する需要、そして水素供給業者への依存から脱却したいという願望は増大する一方です。プランゼーのITM合金は小型の独立した水素発生システムの管膜に使用されています。この用途のITMは多孔質になるように焼結し、水素が最適に拡散するようにしています

ITM管膜には、パラジウムでコーティングします。この材料は水素を透過しますが、不要なガスは拡散させません。

純度 >99.9% の水素は経済的に効率よく作れます。棒状の管膜は500°Cを超える動作温度でその形状を保てなければなりません。酸化してもいけません。酸化イットリウムで安定化させているプランゼーのITM合金はこの条件にうってつけの材料です。

優れた万能選手 ― クロムの材料特性

クロムは高融点金属に属します。融点はプラチナ(1772°C)よりも高く1907°Cですが、高融点金属の中では低いほうです。通常、高融点金属は蒸気圧が低くなりますが、クロムは違います。この金属は蒸気圧がきわめて高いのです。密度も鉄やニオブに近いですが、モリブデンやタングステンの 10g/cm3よりは低くなります。また、弾性率もモリブデンやタングステンよりは低くなります。

クロムは高融点金属の中でも最も耐性が強い部類に属します。多くの酸や塩基に対して耐性があり、きわめて特殊な特性分布を示します。:

特性
原子番号 24
原子量 51.996
融点 1 900 °C / 2 173 K
沸点 2 672 °C / 2 945 K
原子容 1.2 · 10-29[m3]
蒸気圧 1 800 °C
2 200 °C
267 [Pa]
7161 [Pa]
20°C(293K)の密度 7.15 [g/cm3]
結晶構造 体心立方構造
格子定数 2.8847 · 10-10[m]
20°C(293K)の硬度 180 - 250 [HV10]
20°C(293K)の弾性率 294 [GPa]
ポアソン比 0.21
20°C(293K)の線熱膨張係数 6.2 · 10-6[m/(m·K)]
20°C(293K)の熱伝導率 93.7 [W/(m·K)]
20°C(293K)の比熱 0,45 [J/(g·K)]
20°C(293K)の電気伝導度 7.9 · 106[1/(Ω·m)]
20°C(293K)の比電気抵抗 0.127 [(Ω·mm2)/m]
20°C(293K)の音響速度 縦波 横波 6 850 [m/s]
3 980 [m/s]
電子仕事関数 4,5 [eV]

熱物理特性

通常、高融点金属は線熱膨張率が低く、熱伝導率が高いものです。しかし、クロムはモリブデンやタングステンと違い、そのパターンには収まりません。熱膨張率は比較的高くなります。温度が37°Cを超えると、この材料の性質は反強磁性から常磁性に変化します。この温度から融点まで、熱膨張率はきわめて急激に上昇します。この転移温度(ネール温度)が一次相転移点に相当し、ここで熱膨張率に大きく影響するクロムの体積が大幅に増大し、特性が不連続に変化します。

固体は原子構造に応じて5種類の磁性を示します。そのうちの2種類、常磁性と反強磁性は温度によって表れます。

常磁性の場合は、個々の磁気モーメントが外部磁場の方向にそろい、それを強化します。外部磁場がなくなると、内部磁場はふたたび崩壊します。

反強磁性の場合は、個々の磁気モーメントが外部磁場と逆平行になり、巨視的なレベルでは測定可能な磁気的挙動がなくなります。

熱伝導率はタングステンやモリブデンより低くても、その変化の仕方はまったく同じです。つまり、温度が上昇すると、熱伝導率は低下するのです。ネール温度に近づくと、熱伝導率は、熱膨張係数ほどではないにしても、相転移の影響も受けます。

クロムの熱物理特性の中には、温度によって大きく変化するものがあります。熱膨張率と熱伝導率の変化を下図に示します。

クロムとモリブデン、タングステンの線熱膨張率の比較
線熱膨張率
クロムとモリブデン、タングステンの比較
クロムとモリブデン、タングステンの熱伝導率の温度による変化の比較

機械的特性

体心立方金属のクロムには、モリブデンやタングステンと同じで、脆性から延性への遷移温度があります。クロムの場合は、その温度が-50°C~350°C の広い範囲にわたる可能性があります。この脆性から延性への遷移温度に影響する最も重要な要素はクロムの純度であり、とくにその窒素と酸素の含有量が重要になります。ただし、他の合金元素の存在や、微細構造、塑性加工率も遷移温度に少なからぬ影響をおよぼします。完全に再結晶したクロムは、室温ではまったく延性を示しません。しかし、クロムを成形または軟化焼鈍すると、その材料は延性になります。また、合金元素として鉄を加えても、クロムの延性は高まります。

クロムは塑性加工率を上げると強くなり、その強度は、各種の合金元素を加えることによってさらに高めることができます。高い温度安定性と耐クリープ性を確保するために、プランゼーはクロムを酸化イットリウムで合金にします。これで、この材料は850°C までの温度で使えるようになります。

モリブデンやタングステンなどの他の高融点金属とは違い、クロムの融点は比較的低い1907°C です。弾性率も比較的低くなります。とはいえ、クロムよりは融点が高いタンタルやニオブと比べると、はるかに高い弾性率です。

他の高融点金属(モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ)と比較したクロムの弾性率
クロムの弾性率
他の高融点金属(モリブデン、タングステン
タンタル、ニオブ)と比較

化学的特性

クロムはステンレス鋼の合金元素や各種材料の保護コーティング材料として広く知られています。酸素などの腐食媒体と接触すると、クロムは透明な不動態層 (Cr2O3)を形成します。 この不動態層は標準大気中や水溶液中では完全に安定しています。そのため、クロムは装飾用と耐食用を兼ねたコーティングによく用いられます。この不動態層はステンレス鋼の腐食も防ぎます。

Cr2O3は硫酸、硝酸などの強い酸からも確実にクロムを保護します。ガスタービン、ディーゼルエンジンなどの燃焼装置では、高温ガス耐性に優れたクロムが威力を発揮します。1000°C までの温度なら、クロムは何ともありません。安定性の面でも、市販の最高の材料に一歩も引けをとりません。

下表にクロムの耐食性を示します。別途の表示がないかぎり、仕様は酸素の混じらない純粋溶液に関するものです。化学的に活性な物質が少しでも混じると、耐食性は大幅に変化する可能性があります。耐食性について何かご不明な点はございますか?長年の経験と自前の腐食ラボを持つプランゼーが喜んで皆様のお力になります。

水、水溶液、非金属に対する耐食性
温水 < 150 °C 耐食性あり
無機酸 硝酸 < 65 % ~120 °C 硝酸 < 98 %~70 °C 塩酸 / 硝酸 < 10 / 1 % ~130 °C 硫酸 / 硝酸 < 55 / 30 % ~120 °C 王水120 °C耐食性あり耐食性あり耐食性あり耐食性あり耐食性あり
有機酸 酢酸 < 100 %~100 °C シュウ酸 < 10 % ~100 °C ギ酸 < 90 % ~100 °C耐食性あり耐食性あり耐食性あり
アルカリ溶液 水酸化ナトリウム < 80 % ~235 °C エチレンジアミン < 50 % ~180 °C耐食性あり耐食性あり
融解塩 シアン化ナトリウム < 30 % ~100 °C 硫化ナトリウム < 60 %~130 °C耐食性あり耐食性あり
気体 SO2 ~ 1000 °C CH4 ~967 °C O2 ~967 °C 空気 ~ 967 °C Ar / NO2 ~ 967 °C N2 ~ 967 °C NH3 ~ 967 °C耐食性あり耐食性あり耐食性あり耐食性あり耐食性あり耐食性あり耐食性あり

発見から精製まで

1766年、Johann Gottlob Lehmannが現在では「紅鉛鉱」と呼ばれる茶褐色の鉛鉱石(PbCrO4)を発見しました。当時、クロムは未知の存在で、この茶褐色の鉱石に含まれることも知られていませんでした。この茶褐色の鉛鉱石に未知の元素が含まれているとLouis Nicolas Vauquelinが推測したのは1797年のことでした。彼は炭酸カリウムと塩酸を用いて鉱石から酸化クロムを取り出すことに成功し、のちにその鉱石を黒鉛炉で還元し、銀白色の金属を作りました。酸化クロムがさまざまな色を呈するところから、この元素には「色」を意味するギリシア語「クロマ」をもじって「クロム」という名前がつけられました。酸化クロムの色で最もよく知られているものに、米国のスクールバスの色、クロムイエローがあります。

クロムの工業生産で最も重要な鉱物はクロム鉄鉱(FeO.Cr2O3)です。世界のクロム鉄鉱の半分以上は南アフリカで採掘されています。クロム鉄鉱を加工して得られる製品の中では、フェロクロムと金属クロムが最も重要です。フェロクロムの最大の市場はクロムを用いてステンレス鋼を製造する鉄鋼業界です。

クロム鉱石の精製法はいくつかあります。プロセスの複雑さはクロム鉄鉱(FeO.Cr2O3)中のケイ酸マグネシウムなどの他の鉱石の含有率や Cr2O3、FeO の比率で決まります。金属クロムの生産に使用する精鉱には、酸化クロムが50%以上含まれていなければなりません。

純クロムの一般的な製法

クロムは、酸化クロムをアルミで還元するアルミ還元法で生産するのが最も一般的です。この方法では、酸化クロムにアルミ粉末を混ぜ、その混合粉末に点火します。あとは、新たにエネルギーを補給しなくても、発熱反応によってそのまま還元反応が進行します。クロム含有率は、原料粉末の純度次第では99.8%まで可能です。主な不純物には、アルミ、鉄、シリコン、硫黄などがあります。酸化クロムの還元時に起こる発熱反応は以下のとおりです。

とくに高純度のクロムが必要な場合は電解法を使用します。この方法では、99.995%までの純度が可能です。まず CrO3 Cr(IV) を硫酸溶液に溶かし、電着作用でクロムフレークを析出させます。ただし、この方法は環境コストが高くつくので、どの国でも行われているわけではありません。

粉末冶金法

では、粉末冶金法とはどういうものでしょう? 今日では、鉄鋼、アルミ、銅など、工業用金属、合金の多くが、溶解して、鋳型に入れて作られていることはよく知られています。これに対して、粉末冶金法では、溶解を行わず、金属粉末を成形し、その材料の融点より低い温度で熱処理(焼結)して製品を製造します。粉末冶金法では、金属粉末それ自体に加えて、この成形と焼結の工程が何より重要な要素になります。プランゼーはこれらの要素を自社で制御し、最適化することができます。

なぜ粉末冶金法なのでしょう? 粉末冶金法では、融点2 000°C 以上の材料でも作り出すことができます。この製法は少量生産の場合でもとくに経済的です。さらに、目的に応じて調整された粉末ミックスを使用すると、希望の特性を持ったきわめて均質な材料を作ることができます。

粉末クロムは合金元素と混合して型に入れます。その上で、極高圧でプレスします。そのプレス成形物(「圧粉体」という)を次に特殊な高温炉で焼結します。この工程で圧粉体には適切な密度と微細構造ができます。優れた熱安定性、硬度、フロー特性など、プランゼーの材料ならではのきわめて特殊な特性は、鍛造、圧延、引き抜きなどの成形法を適切に組み合わせることによって生まれます。これらの方法がすべてぴたりと適合したときに、初めて厳しい品質の要求水準を満たしたずば抜けた純度と品質の製品を製造することができるのです。

原料<br/>(酸化物)
還元
混合
混合
金属粉末と混合粉末を2 t/cm²の圧力をかけてプレスし、いわゆる圧粉体と呼ばれるものを作ります。何か特別な形のものが求められる場合はプレスの段階で、圧粉体がその仕様にあうように
プレス
焼結
成形
熱処理
処理
機械加工
接合
コーティング
品質
保証
リサイクル

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