ニオブ

ニオブは他の金属と同じで、色は銀白色です。しかし、表面に不動態酸化被膜を作ると、美しい七色に輝かせることができます。もっとも、ただ見た目がきれいというだけではありません。タンタル同様、多くの化学物質に対して耐性があり、低温でも容易に成形することができます。

ニオブは比較的軽量でこの高い耐性を実現できるところが魅力です。あらゆる色のコイン投入口、コーティング用耐食性蒸着ボート、ダイヤモンド製造のるつぼに使用しされています。また、生体適合性が高いので、インプラントの材料としても使用されています。転移温度が高く、超伝導ケーブルや磁石の材料としても理想的です。

ニオブ製ワイヤー
ニオブ製ワイヤー
ニオブ製ワイヤー
ニオブの用途
原子番号41
CAS番号7440-03-1
原子量92.91
融点2 468 °C
沸点4 900 °C
原子容0.0180 [nm³]
20°Cの密度8.55 [g/cm³]
結晶構造体心立方構造
格子定数0.3301 [nm]
地殻中の存在量20.0 [g/t]

純度

投入材料には高純度のニオブのみ使用しています。お客様にも高純度材料の良さをおわかりいただけます。

用途
用途
ニオブ
ニオブ
ニオブの特性
特性
発見から精製まで
発見

ニオブの用途

ニオブの用途は、この材料の特性同様、多岐にわたっています。そのうちのふたつを以下に簡単に紹介します。

美しく色づく輝き

貨幣鋳造に用いると、ニオブは最高の輝きを放ちます。陽極酸化処理で表面に薄い酸化被膜を形成します。そこへ入射した光が屈折し、その被膜を多彩な色に輝かせます。被膜の厚さを調整することによって変化させることができ、赤から青まで、様々な色が可能です。

優れた成形性と耐性

耐性が高く、成形性に優れたニオブは、合成多結晶ダイヤモンド(PCD)製造用のるつぼに理想的な材料です。プランゼーのるつぼは、高圧、高温の合成に利用されています。

純ニオブ溶融品質

ニオブはシート、リボン、ロッドの形状でお届けしますが、これらはすぐに溶融工程に回せます。また、複雑な部品の製造も対応いたします。
プランゼーの純ニオブには、以下の特性があります。

  • 高融点(2468°C)
  • 良好な低温延性
  • 再結晶温度850~1300°C(加工履歴と純度で変化)
  • 水溶液と溶融金属に対する高い耐食性
  • 炭素、酸素、窒素、水素の高い吸蔵能力(脆化の恐れあり)
  • 超伝導性
  • 高い生体適合性

ニオブの材料特性

ニオブは高融点金属に属します。高融点金属とは、融点がプラチナ(1772°C)より高い金属をさします。高融点金属では、個々の原子がとくに強いエネルギーで結合しています。融点が高いほかに、蒸気圧が低く, 弾性率が高く、熱安定性が高いのが特徴です。また、熱膨張率が低いのも特徴です。ニオブの密度は、他の高融点金属と比較すると相対的に低く、8.6g/cm3しかありません。

ニオブは周期表でモリブデンと同じ周期に位置しています。このため、密度や融点はモリブデンに近い値を示します。その一方で、タンタルと同様、水素脆化を起こしやすい特徴もあります。このため、ニオブの熱処理は水素雰囲気中ではなく、高真空中で行います。ニオブとタンタルはあらゆる酸に対する耐性も高く、成形性にも優れています。

ニオブは-263.95°Cという、あらゆる元素の中で最高の超伝導転移温度を持ちます。この温度を下回ると、ニオブは超伝導体になります。さらに、ニオブの特性はきわめて特殊な範囲に分布しています。

特性
原子番号41
原子量92.91
融点 2 468 °C / 2 741 K
沸点4 900 °C / 5 173 K
原子容 1,80 · 10-29[m3]
蒸気圧1 800 °C
2 200 °C
5 · 10-6 [Pa]
4 · 10-3 [Pa]
20°C(293K)の密度 8.55 [g/cm3]
結晶構造体心立方構造
格子定数 3.294 · 10-10 [m]
20°C(293K)の硬度加工後 再結晶後 110 - 180 [HV10]
60 - 110 [HV10]
20°C(293K)の弾性率 104 [GPa]
ポアソン比0.35
20°C(293K)の線熱膨張係数 7.1 · 10-6 [m/(m·K)]
20°C(293K)の熱伝導率 52 [W/(m·K)]
20°C(293K)の比熱 0.27 [J/(g·K)]
20°C(293K)の電気伝導度7 · 106 [1/(Ω·m)]
20°C(293K)の比電気抵抗0.14 [(Ω·mm2)/m]
20°C(293K)の音響速度縦波 横波4 900 [m/s]
2 100 [m/s]
電子仕事関数4.3 [eV]
熱中性子断面積 1.15 · 10-28 [m2]
再結晶温度(焼鈍時間: 1時間)850 - 1 300 °C
超伝導性(転移温度) < -263.95 °C
/ < 9.2 K

熱物理特性

他の高融点金属と同様、ニオブも融点が高く、比較的高い密度を持ちます。熱伝導率はタンタルと同じレベルですが、タングステンよりは低くなります。熱膨張係数はタングステンより高いものの、鉄やアルミと比べると、はるかに低い値です。

ニオブの熱物理的特性は温度とともに変化します。

ニオブとタンタルの線熱膨張係数
ニオブとタンタルの比熱容量
ニオブとタンタルの熱伝導率

機械的特性

ニオブの機械的特性は主にその純度に依存し、とりわけ酸素、窒素、水素、炭素の含有量に影響されます。これらの元素は、少量でも含まれていると、きわめて重大な影響を及ぼすことがあります。ほかに、製造工程、塑性加工履歴、熱処理もニオブの材料特性に影響します。

他の高融点金属と同様、ニオブも体心立方格子構造です。延性脆性遷移温度は室温以下です。このため、ニオブは成形がきわめて容易です。

室温でのニオブの破断伸びは20%を超えています。加工率が増加すると強度と硬度が増しますが、破断伸びは低下します。延性が失われますが、脆くなることはありません。

室温で104GPaのニオブの弾性率はタングステン、モリブデン、タンタルを下回っています。弾性率は温度が上昇すると低下します。1800°C前後では、50GPaになります。

ニオブとタングステン、モリブデン、タンタルの弾性率の比較

ニオブは延性が高いので、曲げ、打ち抜き、プレス、深絞り加工といった成形加工に非常に適しています。冷間溶接を防ぐには、鋼製または超硬工具を使用したほうがよいでしょう。ニオブの切削は比較的難しく、切りくずがきれいにはがれません。このため、チップフォーマ付き工具の使用をお勧めします。ニオブはタングステンやモリブデンより溶接性に優れています。

高融点金属の機械加工について、ご不明な点がある場合は長年の経験をもとに喜んで皆様のお力になります。

化学的特性

ニオブの表面には、密な酸化被膜が自然生成されます。この酸化被膜が表面を保護し、ニオブにきわめて高い耐食性を持たせます。室温では、ニオブが耐性を持たない無機物質は、濃硫酸、フッ素、フッ化水素、フッ酸、シュウ酸など、ごくわずかです。ニオブは水性アンモニウム溶液にも耐性があります。

アルカリ性溶液、溶融水酸化ナトリウム、溶融水酸化カリウムはニオブを腐食します。格子間に元素、とりわけ水素が吸収されると、ニオブが脆くなる可能性もあります。ニオブの耐食性は温度が上昇すると低下し、多様な化学物質を含む溶液と接触していても低下します。室温では、ニオブはフッ素を除き、あらゆる非金属物質に対して完全に耐性があります。しかし、温度が150°C前後を超えると、ニオブは塩素、臭素、ヨウ素、硫黄、リンと反応します。

水、水溶液、非金属に対する耐食性
温水 < 150 °C耐食性あり
無機酸 塩酸 <30%、~110°C
硫酸 <98%、~100°C
硝酸 <65%、~190°C
フッ酸 <60%
リン酸 <85%、~90°C
耐食性あり
耐食性あり
耐食性あり
耐食性なし
耐食性あり
有機酸 酢酸 <100%、~100°C
シュウ酸 <10%
乳酸 <85%、~150°C
酒石酸 <20%、~150°C
耐食性あり
耐食性なし
耐食性あり
耐食性あり
アルカリ溶液水酸化ナトリウム <5%
水酸化カリウム <5%
アンモニア溶液 <17%、~20°C
炭酸ナトリウム <20%、~20°C
耐食性なし
耐食性なし
耐食性あり
耐食性あり
融解塩 塩化アンモニウム <150°C 塩化カルシウム <150°C 塩化鉄 <150°C 塩素酸カリウム <150°C 体液 <150°C 硫酸マグネシウム <150°C 硝酸ナトリウム <150°C 塩化スズ <150°C耐食性あり耐食性あり耐食性あり耐食性あり耐食性あり耐食性あり耐食性あり耐食性あり
非金属フッ素
塩素 <100°C
臭素 <100°C
ヨウ素 <100°C
硫黄 <100°C
リン <100°C
ホウ素 <800°C
耐食性なし
耐食性あり
耐食性あり
耐食性あり
耐食性あり
耐食性あり
耐食性あり

 

 

ニオブは、Ag、Bi、Cd、Cs、Cu、Ga、Hg、K、Li、Mg、Na、Pbという酸素をほとんど含まない溶融金属に対しては耐性があります。Al、Fe、Be、Ni、Coは、Zn、Snとともに、すべてニオブを腐食します。

溶融金属に対する耐食性
アルミ耐食性なしリチウム < 1 000 °Cで耐食性
ベリリウム耐食性なしマグネシウム < 950 °Cで耐食性
< 850 °Cで耐食性ナトリウム < 1 000 °Cで耐食性
カドミウム < 400 °Cで耐食性ニッケル耐食性なし
セシウム < 670 °Cで耐食性水銀 < 600°Cで耐食性
耐食性なし < 1 100 °Cで耐食性
ガリウム < 400 °Cで耐食性ビスマス < 550°Cで耐食性
カリウム < 1 000 °Cで耐食性亜鉛耐食性なし
< 1 200 °Cで耐食性スズ耐食性なし
コバルト耐食性なし

 

ニオブは希ガスとは反応しません。このため、純度の高い希ガスは保護雰囲気として使用することができます。ただし、温度が上がると、ニオブは空気中の酸素、窒素、水素と激しく反応します。酸素と窒素は、高真空中において1700°Cを超える温度で焼鈍除去することができます。水素はそれより低い800°C前後の温度で除去されます。このプロセスでは、結果的に酸化物の揮発と構造の再結晶化によって材料が失われます。

ガスに対する耐食性
酸素および空気 <230°Cで耐食性 水蒸気 <150°Cで耐食性
水素 <250°Cで耐食性一酸化炭素 <800°Cで耐食性
窒素 <300°Cで耐食性二酸化炭素 <400°Cで耐食性
炭化水素 <700°Cで耐食性希ガス 耐食性あり
アンモニア <300°Cで耐食性

 

高温炉でニオブを使う場合は注意が必要です。ニオブは酸化物やグラファイトでできた炉材と反応することがあります。アルミ、マグネシウム、ジルコニウムなどの非常に安定した酸化物でも、高温でニオブと接触すると還元されることがあります。グラファイトと接触すると、炭化物が形成され、ニオブが脆化する可能性があります。通常、ニオブはモリブデンやタングステンと問題なく組み合わせることができますが、六方晶窒化ホウ素や窒化ケイ素とは反応する可能性があります。下表の限界温度は真空中でのものです。保護雰囲気を使用すると、値はこれより100~200°C低下します。

水素による脆化
硫酸 98%、~20°C 水素原子 >25°C
硫酸 10%、190°C シュウ酸 10%、20°C
リン酸 85%、100°C 水酸化ナトリウム 5%、100°C
塩酸 30%、100°C 水素 250°C

水素脆化を防ぐ方法

  • 電気絶縁化
  • 陽極化(約+15V)
  • 溶液への酸化剤の添加
  • 表面コーティング
  • 貴金属(Pt、Au、Pd、Rh、Ruなど)との電気的接触

水素の存在によって脆化したニオブは、800°Cでの高真空焼鈍によって再生することができます。

発見から精製まで

1801年、英国の化学者Charles Hatchettが米国から送られてきた重くて黒い石の標本を調べました。彼はその石に未知の元素が含まれていることを発見し、原産国にちなんでその元素をコロンビウムと名づけました。現在では広く使われているニオブという名前がつけられたのは1844年のことで、つけたのは第2発見者のHeinrich Roseでした。Heinrich Roseは初めてニオブとタンタルを分離した人です。それまで、このふたつの材料は区別がついていませんでした。Roseはギリシア神話に出てくるタンタロス王の娘ニオベにちなんでニオブという名前をつけました。タンタルと深い関係にあることを強調したかったのです。金属ニオブは1864年にC. W. Blomstrandが還元法で初めて製造しました。ニオブの名前はそれから100年近く、長い論争が繰り返され、統一されていませんでした。その名前を「ニオブ」に統一したのは国際純正・応用化学連合です。

ニオブは、自然界ではニオバイトとも呼ばれる化学式(Fe,Mn)[(Nb,Ta)O3]2で表されるコルンブ石の形で存在しているのが最も一般的です。もうひとつの重要なニオブ鉱石としては、パイロクロアと呼ばれる複雑な構造を持つカルシウムニオブ酸塩の鉱石があります。この鉱石の鉱床は、オーストラリア、ブラジル、それにアフリカの一部の国にあります。

採掘した鉱石は何段階にもわたる精製工程で(Ta,Nb)2O5 70%程度の精鉱にします。そして、フッ酸と硫酸に溶解させます。そこからさらに、抽出処理を行ってフッ化タンタルとフッ化ニオブを分離析出させます。そのうちのフッ化ニオブを酸素で酸化して五酸化ニオブにし、2000°Cで炭素によって還元して、金属ニオブを作り出します。超高純度ニオブを作るときは、さらに電子ビーム再溶融処理を行います。

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