モリブデン

モリブデンは、他に例を見ないその機械・化学的特性で厳しい要求に応える優れた金属材料です。融点が高く、熱膨張率が低く、熱伝導性が高い利点を生かし、さまざまな用途で利用されています。モリブデンの多様な用途。たとえば、照明産業のリボンやワイヤー、パワーエレクトロニクス用の半導体基板、ガラス溶融電極、高温炉のホットゾーン、太陽電池やフラットパネルのコーティング用スパッタリングターゲットなど様々な用途で欠かす事ができない材料です。

モリブデン細ワイヤー
モリブデン細ワイヤー
モリブデン製ホットゾーン
ホットゾーン
モリブデン製ガラス溶融電極
ガラス溶融電極
モリブデン製ベースプレート
モリブデン製ベースプレート
モリブデンの特性
原子番号42
CAS番号7439-98-7
原子量95.94
融点2893K / 2620°C
沸点5833K / 5560°C
原子容0.0153 [nm3]
20°Cの密度10.2 [g/cm3]
結晶構造体心立方構造
格子定数0.3147 [nm]
地殻中の存在量1.2 [g/t]
用途
用途
モリブデン合金
合金
モリブデンの特性
特性
発見から精製まで
発見
粉末治金法
粉末
冶金法

確かな純度

酸化モリブデンから最終製品まで、プランゼーはすべて自社内の工程でモリブデン製品を生産しています。投入材料には自社基準に沿った高純度の酸化モリブデンしか使用していません。そのため、お客様にも最高品質材料を安心してご購入いただけます。データでご覧ください。

元素代表値

[μg/g]
保証値
max.
[μg/g]
Al110
Cr320
Cu220
Fe520
K620
Ni110
Si220
W169300
C1330
H010
N510
O640
Cd15
Hg*01
Pb05


*初期値

クロム(VI)と有機不純物は製造過程において完全に取り除かれています。(1000度を超える水素雰囲気の中、多段熱処理をしています。)

用途

プランゼーのモリブデンは様々な特性を持つ為、用途も多彩です。代表的な3特性を以下に簡単に紹介します。

高純度と耐クリープ性

プランゼーのモリブデンは純度が高く、高温に耐え、なおかつ機械加工も容易です。この特性を生かす例は、サファイア単結晶成長プロセスに使用されているるつぼです。高い純度とクリープ性により、最適な溶融固化容器であることが実証されています。

形状安定性と耐食性

形状安定性と金属や溶融ガラスに対する耐食性に優れたプランゼーの材料は、スターラーなどに加工され、あらゆる溶融ガラスの攪拌均質化を可能にします。当用途には、高温や強い侵食性を特徴とする溶融ガラスに対するすぐれた耐食性が必要ですが、モリブデンでは可能です。最適な攪拌と長い製品寿命をお約束します。

熱伝導と熱膨張

電力整流器(トランジスタダイオード)における高い電力密度と電流は多量の熱を生み出します。良好な熱伝導性と半導体材料に適した熱膨張特性のため、モリブデンやその合金はパワーエレクトロニクス用途に適した基板として使用されます。この用途(基板)においてはモリブデンを使用することにより確実に熱を放散させることができます。

純モリブデン ― モリブデン合金

プランゼーはいかなる用途でも完璧に機能するモリブデンをお届けします。各種の材料と合金化を実現することによって、以下の特性を自由にコントロールすることができます。

  • 物理的特性(融点、蒸気圧、密度、導電性、熱伝導性、熱膨張率、熱容量など)
  • 機械的特性(強度、破壊挙動、耐クリープ性、延性など)
  • 化学的特性(耐食性、エッチング性など)
  • 機械加工性(切削性、成形性、溶接性など)
  • 再結晶特性(再結晶温度、脆化、時効効果など)

これ以外のモリブデンの各種特性も、プランゼーが独自に設計した製造工程を用いることにより、幅広く調整することができます。その結果、個々の用途に応じてさまざまな特性を正確に調整したモリブデン合金をお届けすることができます。

材料名化学組成(重量%)
Mo (純モリブデン) >99.97
TZM0.5% Ti / 0.08% Zr / 0.01~0.04% C
MHC1.2% Hf / 0.05~0.12% C
ML(モリブデンランタン)ML0.3 % La2O3
MLR (R = 再結晶化)0.7 % La2O3
MLS (S = 応力除去)0.7 % La2O3
MoILQ (ILQ = 白熱灯品質)0.03 % La2O3
MY(モリブデンイットリウム)MY0.47 % Y2O3/ 0.08 % Ce2O3
MoRe(engl.)MoRe55.0 % Re
MoRe4141.0 % Re
MoW(engl.)MW2020.0 % W
MW3030.0 % W
MW5050.0 % W
MoCu(engl.)MoCu3030.0 % Cu
MoCu1515.0 % Cu
MoZrO2 (酸化ジルコニウムモリブデン)MZ171.7 % ZrO2
MoNb (モリブデンニオブ)MoNb109.71 % Nb
MoTa (engl.)MT1110.75 % Ta

TZM(チタンジルコニアモリブデン)

少量の微細な炭化物を加えることによりモリブデンをTZMに変えることができます。純モリブデンより強く、再結晶温度も高く、耐クリープ性にも優れています。たとえば、鍛造工具やX線管用回転アノードなど、厳しい機械的負荷がかかる高温用途に使用されます。推奨使用温度は700~1400°C です。

MHC(ハフニウムカーボンモリブデン)

ハフニウムとカーボンを含む粒子強化型合金です。微細な炭化物が均一に分布しているため、耐熱性や耐クリープ性に優れ、最高推奨使用温度もTZMより150°C高く、1550°Cです。金属成形に使用されます。たとえば、押出金型に使用すると、極端な熱負荷や機械的負荷にも耐えられます。

ML(ランタンドープモリブデン)

少量(0.3または0.7%)の酸化ランタン粒子を添加して繊維状の結晶組織に加工しています。この特殊な微細構造は2000°C までの温度で安定しています。このため、極端な使用条件のもとでも耐クリープ性を発揮します。通常は機械加工して、ワイアー、焼結・熱処理トレイ、蒸発器コイルなどの炉部品にします。照明産業では、保持ワイアーやリードピン用ワイアーなどにも使用します。

MoILQ(白熱灯品質モリブデン)

酸化ランタンを0.03重量%だけマイクロドープし、主に照明用に開発した合金です。添加物を特別に調整しているので、再結晶温度は純モリブデンより高くなります。再結晶後の微細構造も純モリブデンより微細粒で、ML材料に比べると成形に適し、加工性が良好です。白熱灯やハロゲンランプのフィラメント製造で心線やサポートワイヤーとして使用されます。

MY(イットリウムドープモリブデン)

0.47重量%の酸化イットリウムと0.08%の酸化セリウムを含む酸化粒子強化型合金です。主に照明用に開発しました。石英封着部の密着性に優れ、溶接性も良好で、純モリブデンより耐酸化性にも優れています。主に石英封着用ESSリボンやコーティング用の蒸着ボートに使用します。

MoW(モリブデンタングステン)

タングステンはモリブデンの高温特性、耐食性を向上させます。タングステン20重量%のMW20から50%のMW50まで、組成はさまざまに変化させることができ、主に亜鉛の製造やガラス産業のスターラーに使用します。また、フラットスクリーンコーティング用スパッタリングターゲット材料としても使用します。MoW層はエッチング性が高く、薄膜トランジスタの製造にも有効です。

MoRe(レニウムモリブデン)

少量のレニウムがモリブデンに室温以下でも延性を持たせることを可能にします。Mo5ReとMo41Reの組成で主に熱電対に使用されているほか、高度な延性が求められる用途でも使用されています。

MoCu(モリブデン銅)

30重量%までの銅を含む複合材料です。銅が持つ高い熱伝導性とモリブデンの特徴ある低い熱膨張率がひとつの材料において実現しています。エレクトロニクス部品の冷却放熱素子(ヒートシンク)の材料に最適です。

MoZrO2 (酸化ジルコニウムモリブデン)

 

ガラス溶融電極は侵食性のある溶融ガラスと高温に耐えなければなりません。1.7重量%の酸化ジルコニウムを加えることにより、モリブデンにガラス製造で必須の特性を持たせています。MoZrO2は溶融ガラスに対する耐食性と高温安定性を発揮し、純モリブデンよりクリープ強度にも優れています。

プランゼーのモリブデンスパッタリングターゲットは液晶パネルのアレイ工程の製膜に使用されていますが、タッチパネル用途では高い耐食性が必要とされます。そこで、当社の基幹材料であるモリブデンにニオブを加え、合金化することでひときわ高い耐食性を持たせています。高い耐食性を持ちながらスパッタ層の形成を容易にする材料をお探しではありませんか? それでしたら当社のモリブデンタンタル合金をお試しください。

万能材料 ― モリブデンの特性

モリブデンは高融点金属に属します。高融点金属とは、融点がプラチナ(1772°C)より高い金属をさします。高融点金属では、個々の原子がとくに強いエネルギーで結合しています。融点が高いほかに、蒸気圧が低く、弾性率が高く、熱安定性が高いのが特徴です。また、熱膨張率が低く、比較的密度も高くなります。モリブデンはタングステンと周期表上で同族に属し、原子構造や化学的特性が似ています。どちらの元素も熱伝導性に優れている点も似ています。ただし、モリブデンはタングステンに比べ、比較的低い温度でも加工が容易です。

モリブデンはバランスの良い特性を持つ万能金属材料です。

特性
原子番号42
原子量95.94
融点2620 °C / 2893 K
沸点5560 °C / 5833 K
原子容1,53 · 10-29[m3]

蒸気圧

1800 °C1 · 10-4 [Pa]
2200 °C5 · 10-2 [Pa]
20°C(293K)の密度10.2 [g/cm3]
結晶構造体心立方構造
格子定数3.147 · 10-10[m]

20°C(293K)の硬度

応力除去焼鈍後>220 [HV10]
再結晶後160 - 180 [HV10]
20°C(293K)の弾性率320 [GPa]
ポアソン比0.31
20°C(293K)の線熱膨張係数5.2 · 10-6[m/(m·K)]
20°C(293K)の熱伝導率142 [W/(m ·K)]
20°C(293K)の比熱0.254 [J/(g·K)]
20°C(293K)の電気伝導度17.9 · 106[1/(Ω·m)]
20°C(293K)の比電気抵抗0.056 [(Ω·mm2)/m]

20°C(293K)の音響速度

縦波6250 [m/s]
横波3350 [m/s]
電子仕事関数4.39 [eV]
熱中性子断面積2.7 · 10-27[m2]

モリブデンとその合金の特性は添加する元素の種類や量、また製造工程を工夫することによって変えることができます。プランゼーのTZMとMHCに含まれる炭化物は、あらゆる温度領域でモリブデンの機械的特性を向上します。また、酸化物はモリブデンの再結晶温度とクリープ強度を高め、レニウムはモリブデンの室温での延性に貢献します。銅は熱膨張係数にそれほど影響を与えずに熱伝導率を向上させます。

リフラクトリーメタルの蒸気圧
リフラクトリーメタルの蒸気圧
リフラクトリーメタルの蒸着率
リフラクトリーメタルの蒸着率
モリブデンとTZM及びMLRの線熱膨張率比較
モリブデンとTZM
MLRの線熱膨張率比較
モリブデン、TZM、MLRの熱伝導度
モリブデン、TZM、MLRの熱伝導度
熱に応じて
比熱
比熱
比電気抵抗
比電気抵抗

モリブデン合金と純モリブデンの比較

TZMMHCMLMoILQ
合金元素(重量%)0,5 % Ti
0,08 % Zr
0,01 - 0,04 % C
1,2 % Hf
0,05 - 0,12 % C
0,3 % La2O3
0,7 % La2O3
0,03 % La2O3
熱伝導率--
室温での安定性++
高温での安定性/ 耐クリープ性++(<1 400 °C)
+ (>1 400 °C)
++(<1 500 °C)
+ (>1 500 °C)
+(<1 400 °C)
++ (>1 400 °C)
+
再結晶温度++++++
HT使用後の延性+++++
溶接性++++
MYMoW(engl.)MoRe(engl.)MoCu(engl.)
合金元素(重量%)0,47 % Y2O3
0,08 % Ce2O3
20 - 50 % W5 / 41 % Re15 - 30 %銅
熱伝導率~--++
室温での安定性~++-
高温での安定性/ 耐クリープ性+++-
再結晶温度+++-
HT使用後の延性+~+++
溶接性+~++-

~ 純Moと同程度 + 純Moより高い ++ 純Moより大幅に高い - 純Moより低い -- 純Moより大幅に低い

熱物理特性

高融点金属は、熱膨張率が低く、密度が高いのが特徴です。これは、モリブデンについてもいえます。この材料には、熱伝導率が高く、比電気抵抗が低いという特徴もあります。また、原子の結合が強く、弾性率も他の多くの金属より高くなります。モリブデンの熱物理的特性は温度とともに変化します。

モリブデンの熱膨張
モリブデンとタングステンの線熱膨張係数
モリブデンとタングステンの比熱
モリブデンとタングステンの比熱
モリブデンの放射率

図は、モリブデンの温度依存性放射率の値をまとめたもの(赤いスキャッタバンド)です。通常の納入状態におけるプランゼー製品サンプルの実験的測定値は、スキャッタバンドの上端に見ることができます。

物質の比電気抵抗は、熱伝導率の逆数になります。よって比電気抵抗が低くければ低いほどは、熱伝導率は良くなります。比電気抵抗はΩmm²/mで表されます。金属の比電気抵抗は様々です。例えば、銀は0.016Ωmm²/m、チタンはtitanium 0.8Ωmm²/mです。温度、合金元素、不純物、原材料の不良などが比電気抵抗値に強く影響します。プランゼーの高性能材料、モリブデン、タングステンの比電気抵抗は非常に低く、室温で約0.05Ωmm²/m、1,500°C下でも0.5Ωmm²/m以下にとどまります。よって、プランゼーの材料は接点材料やコーティング材に非常に適しています。またモリブデンとタングステンは立方結晶格子を持っているため、すべての結晶方位において同じ比電気抵抗を有しています。

モリブデンとタングステンの比電気抵抗
モリブデンとタングステンの比電気抵抗
モリブデンとタングステンの熱伝導率の温度による変化
モリブデンとタングステンの熱伝導
熱に応じて

機械的特性

モリブデンは融点が2620°Cと高いため、高温でも強度と耐クリープ性を保ちます。強度は、塑性加工率によりさらに高まります。延性も、ほかの金属と違い、塑性加工率を増やすと高まります。また、レニウムを合金元素として加えることでさらに延性を高め、脆性延性遷移温度を下げることが可能です。また、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、カーボン、レアアース酸化物も合金元素として加えることも可能です。モリブデンとその合金は、モリブデン原子間の結合が強いため、他の金属と比べると弾性率がきわめて高くなります。このような条件を生かして、プランゼーはある特性を特定の範囲に絞ることにより多様な材料を作り出すことができるのです。

モリブデンの弾性変化
弾性率の変化
タングステン、タンタル、ニオブと比較
高融点金属: タングステン、タンタルおよびニオブ
モリブデンとTZMシートの0.2%耐力比較
モリブデンとTZMの焼鈍材と
再結晶材の0.2%耐力比較
(シート厚さ:2mm)
代表的な引張強度
モリブデンとTZMシートの焼鈍材と再結晶材の
最大引張強度比較(シート厚さ:2mm)
クリープ特性比較
モリブデンとTZM及びMLRのクリープ特性比較
1100 °C
モリブデンとTZM及びMLRのクリープ特性比較1450℃及び1800℃
モリブデンとTZM及びMLRのクリープ特性比較
1450℃及び1800℃

クリープ試験用供試材の説明

材料試験温度 [°C]板厚
[mm]
試験前の熱処理
Mo11001.51200 °C / 1h
14502.01500 °C / 1h
18006.01800 °C / 1h
TZM11001.51200 °C / 1h
14501.51500 °C / 1h
18003.51800 °C / 1h
MLR11001.51700 °C / 3h
14501.01700 °C / 3h
18001.01700 °C / 3h
モリブデンの0.2%耐力比較
Mo, TZMロッドの0.2%耐力比較
(ロッド直径25mm、焼鈍材)
モリブデン、TZMシート材料の標準最大抗張力
モリブデン、TZMロッド材料の標準最大抗張力
(ロッド直径25mm、焼鈍材)
モリブデンとTZM及びMHCのロッドの最大引張強度比較
(ロッド直径25mm、焼鈍材)
モリブデンシートの光学顕微鏡写真
タングステンシートの光学顕微鏡写真
(応力除去状態)
モリブデンシートの光学顕微鏡写真
タングステンシートの光学顕微鏡写真
(再結晶)
MLRシートの光学顕微鏡写真
MLRシートの光学顕微鏡写真

脆性延性遷移温度

モリブデンは、一定の温度以上に加熱すると、脆性を失い、延性を保有するようになります。この脆性から延性への遷移を引き起こす温度を脆性延性遷移温度といいます。これは、化学組成や塑性加工率など、さまざまな要素によって変化します。

モリブデン材料の延性や破壊靭性は、再結晶化が進むと低下します。つまり、再結晶温度がひとつの目安になります。再結晶温度より高い温度では、材料の構造が変化します。この変化が起こると、強度や硬度が低下し、破壊の可能性が高くなります。元の構造を取り戻すには、圧延、スエージング、引き抜きなどの過酷な成形加工が必要になります。再結晶温度は、モリブデンの塑性加工率、化学組成、とりわけ添加材の含有率に大きく依存します。基本的なモリブデン材料の標準的な再結晶温度を下表に示します。

材料1時間で完全に再結晶する温度[°C]
塑性加工率=90%塑性加工率=99.99%
Mo (純モリブデン)1100-
TZM1400-
MHC1550-
ML13002000
MoILQ12001400
MY11001350
MoRe411300-
MoW301200-

モリブデンを始めとする高融点金属の成形や機械加工の際には、これら材料の特性を十分に理解しておくことが重要です。曲げ、カシメなどの成形加工は、シートに亀裂を生じさせずに加工するためには、脆性延性遷移温度より高い温度で行う必要があります。シートが厚くなるほど、亀裂なしに成形するには高い温度が求められます。工具が鋭利な状態で、予熱温度が適切に調整されていれば、モリブデンは切断やパンチングにも申し分なく適しています。また、切断工程は、きわめて堅牢でパワフルな機械を使用すれば問題なく行うことができます。高融点金属の成形、機械加工についてご不明な点がございましたら、長年の経験を持つプランゼーが喜んで皆様のお力になります。

化学的特性

モリブデンとその合金の優れた化学的特性は、化学産業とガラス産業で高く評価されています。湿度60%未満の大気中では、耐食性を示します。湿度がこのレベルを超えないと、変色も起こりません。アルカリ性、酸化性の液中では、温度が100°Cを超えると、耐性を失います。250°Cを超える温度で、酸化性ガス、酸化性成分中で使用する用途には、酸化防止用の SIBOR® 保護コーティングを用意しています。溶融ガラス、水素、窒素、希ガス、溶融金属、酸化物セラミックスは、モリブデンに対しては超高温でも腐食作用を及ぼすことはなく、また他の金属材料ほど侵襲作用も及ぼしません。

モリブデンの耐食性を下表に示します。別途表示がない場合、仕様は酸素を含まない溶液です。化学的に活性な物質が少しでも混入すると、耐食性は大きく変化する可能性があります。耐食性についてご不明な点がございましたら、プランゼーまでお問合せください。

モリブデンの耐食性
冷水及び温水 < 80 °C (353 K)耐食性あり
温水 > 80 °C (353 K)耐食性なし
窒素または反応抑制剤を含む温水耐食性あり
無機酸フッ酸 < 100 °C (373 K)耐食性あり
王水、冷・温とも耐食性なし
オルトリン酸 ~270 °C (543 K)耐食性あり
硝酸、冷・温とも耐食性なし
塩酸、冷・温とも耐食性あり
硫酸 <70%、~190°C (463K)耐食性あり
四価クロム硫酸耐食性なし
アルカリ溶液アンモニア溶液耐食性あり
水酸化カリウム(KOH) <50 %、~100°C (373K)耐食性あり
水酸化カリウム (KOH > 50 %)耐食性なし
水酸化ナトリウム(NaOH) <50 %、~100°C (373K)耐食性あり
水酸化ナトリウム(NaOH) 50%耐食性なし
次亜塩素酸ナトリウム溶液、冷・温とも耐食性なし
有機酸ギ酸 20 °C (293 K)耐食性あり
酢酸 ~100°C (373K)耐食性あり
濃縮乳酸 20 °C (293 K)耐食性あり
シュウ酸 20 °C (293 K)耐食性あり
酒石酸 20°C (293 K)耐食性あり
非金属ボロン ~1600°C (1873K)耐食性あり
カーボン ~1100°C (1373K)耐食性あり
リン ~800°C (1073K)耐食性あり
硫黄 ~440°C (713K)耐食性あり
シリコン ~600°C (873K)耐食性あり
フッ素 20 °C (293 K)耐食性なし
塩素 ~250°C (523K)耐食性あり
臭素 ~450°C (723K)耐食性あり
ヨウ素 ~450°C (723K)耐食性あり
溶融ガラス*~1700°C (1973K)耐食性あり

* 酸化性成分を含むガラス(鉛ガラスなど)を除く

ガスに対する耐食性
アンモニアガス < 1000°Cで耐食性空気及び酸素 < 400°Cで耐食性
希ガス超高温まで耐食性窒素超高温まで耐食性
二酸化炭素 < 1200°Cで耐食性水素超高温まで耐食性
一酸化炭素 < 1400°Cで耐食性水蒸気 < 700°Cで耐食性
炭化水素 <1100°Cで耐食性

酸素を含む雰囲気では、 400°Cを超えると活発に酸化が起こることにご注意ください。 Sibor® などの特殊コーティングでモリブデンの酸化を防ぐことも可能です。

セラミック炉材に対する耐食性
酸化アルミ < 1900°Cで耐食性酸化マグネシウム < 1600°Cで耐食性
酸化ベリリウム < 1900°Cで耐食性炭化ケイ素 < 1300°Cで耐食性
グラファイト < 1100 °Cで耐食性酸化ジルコニウム < 1900°Cで耐食性
マグネシアれんが < 1600°Cで耐食性

30重量%までタングステンを加えると、モリブデンの亜鉛内での耐食性は大幅に改善されます。

溶融金属に対する耐食性
アルミ < 700°Cで耐食性ナトリウム <1030°Cで耐食性
ベリリウム耐食性なしニッケル耐食性なし
<1100°Cで耐食性プルトニウム <900°Cで耐食性
酸素含有鉛 < 500°Cで耐食性水銀 <600°Cで耐食性
セシウム <870°Cで耐食性ルビジウム < 1000°Cで耐食性
耐食性なしスカンジウム耐食性なし
ガリウム <300°Cで耐食性希土類(レアアース) <1100°Cで耐食性
カリウム < 1200°Cで耐食性耐食性あり
<1300°Cで耐食性ウラン耐食性なし
耐食性ありビスマス < 1400°Cで耐食性
リチウム < 1400°Cで耐食性亜鉛 < 400°Cで耐食性
マグネシウム < 1000°Cで耐食性 スズ < 550°Cで耐食性

発見から精製まで

「モリブデン」の名前の由来となったギリシア語のmolybdos(ラテン語ではmolybdaena)という言葉は、BC3世紀ごろから使われていました。しかし、この言葉はもともと「鉛の鉱石」を意味し、グラファイト(黒鉛)や方鉛鉱をさしていましたが、(モリブデンの原鉱石)輝水鉛鉱もその名で呼ばれるようになりました。17世紀になると、科学者たちは、 molybdaena と呼んでいた鉱物に鉛が含まれていないことに気づき、1778年になって、Carl Wilhelm Scheeleが硝酸を使ってその鉱物から白い酸化モリブデン(MoO3)を作りました。Scheeleはその白い沈殿物をterra molybdaenae(molybdenum earth)と名づけました。1781年になると、Peter Jakob Hjelmが初めてこの酸化モリブデンを還元することに成功しました。その結果、できたのが金属モリブデンです。しかし、モリブデンの化学記号や化学的特性の知識は、Jöns Jakob Berzeliusの功績です。純モリブデンは、20世紀の初めに三酸化モリブデン(MoO3)を水素で還元して初めて作られました。 モリブデンの製造に使われる最も重要な鉱物は、輝水鉛鉱(MoS2)と黄鉛鉱すなわち水鉛鉛鉱(PbMoO4)です。世界最大級のモリブデン鉱山は、北米、南米、中国に見られます。チリの銅鉱山では、国の銅採掘事業の副産物として輝水鉛鉱がとれています。 これらの鉱石には約0.5重量%のモリブデンが含まれています。付随する鉱物は、いわゆる浮遊選鉱法を用いてモリブデンから分離されます。この選鉱後には、輝水鉛鉱(MoS2)の含有率が平均約85%になります。この選鉱を600°Cで焙焼します。輝水鉛鉱(MoS2)は酸化されて三酸化モリブデン(MoO3)になります。

Molymet

チリ企業Molibdenos y Metales (Molymet)の株式を買収したプランゼーは、モリブデンの長期供給体制の確保へ向けて大きな一歩を踏み出しました。Molymetは世界最大のモリブデン鉱石選鉱処理業者です。

モリブデン選鉱に0.1%程度のレニウムが含まれていることはご存じでしたか?焙焼中、このレニウムが七酸化レニウム(Re2O7)に昇華し、モリブデン選鉱プロセスの副産物として集塵装置から回収されます。

焙焼したモリブデン選鉱、すなわち化学物質名でいうと酸化モリブデンは、約1000°C で昇華させるか、化学的な方法を用いてさらに精製します。このプロセスで、金属モリブデンの製造に使用する以下の産物が得られます。

  • ADM(二モリブデン酸アンモニウム)/ (NH4)2O 2MoO3 (白)
  • 三酸化モリブデン / MoO3 (緑)

プランゼーはここで、金属モリブデン粉末を得るために、上記の中間生成物に水素の存在下で2段階の還元プロセスを通過させます。水素雰囲気の中で三酸化モリブデンを還元して、一段階還元された酸化モリブデン(MoO2)を得ます。これは通常、赤茶色を呈するので、「モリブデンレッド」とも呼ばれています。

第2の還元も水素雰囲気下で行いモリブデン粉末を作ります

第2の還元も水素雰囲気中で行い、最終製品、メタリックグレイのモリブデン粉末を作ります。

第2の還元も水素雰囲気下で行いモリブデン粉末を作ります

粉末冶金法

粉末冶金法とは?今日では、鉄鋼、アルミ、銅などの工業用金属や合金の多くが、溶解され、鋳型で製造されていることはよく知られています。これに対して、粉末冶金法では溶解を行わず、金属粉末を成形し、その材料の融点より低い温度で熱処理(焼結)して製品を製造します。粉末冶金法では、金属粉末それ自体に加えて、この成形と焼結が何より重要な工程になります。プランゼーはこれらの工程をすべて自社で制御し、最適化することができます。

なぜ粉末冶金法なのでしょうか?粉末冶金法では、融点が2000°C をはるかに上回る金属でも成形品を作り出すことができます。この製法は少量生産の場合とくに経済的です。さらに、目的に応じて調整された添加物により、希望の特性を持つ材料を均質な品質で作ることができます。

モリブデン粉末は合金元素と混合して型に詰めます。この混合物を最大圧力2000barで圧縮します。次に、そのプレス成形物(「圧粉体」という)を特殊な高温炉に入れ、2000°C以上の温度で焼結します。この工程で圧粉体には適切な密度と微細構造ができます。優れた熱安定性、硬度、フロー特性など、プランゼーの材料ならではのきわめて特殊な特性は、鍛造、圧延、引き抜きなどの成形法を適切に組み合わせることによって生まれます。これらの方法がすべてぴたりと適合したときに、初めて厳しい品質の要求水準を満たしたずば抜けた純度と品質の製品を製造することができるのです。

原料<br/>(酸化物)
還元
混合
混合
金属粉末と混合粉末を2 t/cm²の圧力をかけてプレスし、いわゆる圧粉体と呼ばれるものを作ります。何か特別な形のものが求められる場合はプレスの段階で、圧粉体がその仕様にあうように
プレス
焼結
成形
熱処理
処理
機械加工
接合
コーティング
品質
保証
リサイクル

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