Densimet®インサート
完璧なアルミ鋳造へ向けて
アルミ鋳造工程では、溶融金属を金型に注入または圧入します。この工程は、たとえばシリンダーヘッド、ホイールリムなど、その他多くのアルミ鋳物の製造に使用されています。ここでも、金型インサートは600°C以上の溶融金属から継続的に耐えなければなりませんが、プランゼーのタングステンヘビーメタル合金Densimet®製とモリブデン合金TZM製インサートなら、問題はありません。
お客様のメリット
- サイクルタイムの短縮
- お客様の製品の表面品質の向上
- 金型の長寿命化
- クラックレスの金型インサート
ご注文の仕様の金型インサート、スプルーブシュ、冷却インサートなどの個々の部品のほか、お客様の金型用の半製品もお届けいたします。
クラックと摩耗 なぜ従来の金型には問題があるのでしょうか
溶融アルミが金型の表面を流る際に、鋼材の金型表面はアルミからの浸食や溶着などの影響を受けます。鉄系材料が溶融アルミに溶解されたり、鋼材が高流速によって摩耗するなど、金型の表面は徐々に摩耗していきます。
頻繁な温度サイクルもまた、金属の鋳込みの際にツールや構成部品にストレスを与えます。温度分布における変化と異なる熱膨張係数は熱応力を生じる原因となります。熱疲労から起こる亀裂と歪曲は構成部品の故障を引き起こします。

したがって、アルミ鋳造に使用される金型の理想的な材料は機械的、熱物理的、化学的、そしてトライボロジー的な条件を満たしていていなければなりません。クロムやモリブデンなどを添加している従来の合金熱間加工鋼材はこの期待に応えることができません。それではどうすればいいのでしょうか?アルミ鋳造工程でのコスト削減と生産性の向上をお望みなら、金型には最高品質の材料を使用する事をお勧めします。金型の摩耗と精神的な摩耗を拭い去ってくれることでしょう。
必要とされている特性は金属融解に対する化学的な耐性、高熱伝導率と優れた高温安定性です。
アルミ鋳造のための材料
当社キャストアルミ材と熱間加工鋼の比較(標準値) | ||||
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TZM | D2M | D185 | SKD61 | |
耐摩耗性 | ++ | + | + | -- |
耐酸化性 | from 400 ºC | from 600ºC | from 600ºC | ごく僅か |
熱伝導率 (500ºC) [W/m K] | 127 | 65 | 90 | 30 |
耐周期的熱応力 | ++ | ++ | ++ | -- |
衝撃強度 | 0 | - | - | ++ |
引張強度 Rm (RT*) [MPa] | 780 | 990 | 800 | 1200 - 1600 |
引張強度 Rm (500ºC) [MPa] | 500 | 670 | 600 | 100 - 1400 |
降伏強度 Rp0.2 (RT*) [MPa] | 730 | 700 | 600 | 1000 - 1400 |
降伏強度 Rp0.2 (500ºC) [MPa] | 490 | 460 | 420 | 650 - 900 |
破断伸び A5 (RT*) [%] | 19 | 18 | 10 | 10 - 15 |
破断伸び A5 (500ºC) [%] | 15 | 16 | 7 | |
弾性係数[GPa] | 320 | 360 | 385 | 214 |
熱膨張率 αth (500ºC) [10-6 K-1] | 5.5 | 5.6 | 5.2 | 13.0 |
硬度[HRC] | 25 | max. 31 | max. 31 | >45 |
*RT = 室温
TZM: チタン0.5%、 ジルコニウム0.08% 、カーボン0.01-0.04% をモリブデンに含有
D185: タングステン97%、他ニッケル、鉄
D2M: タングステン90%、他ニッケル、モリブデン、鉄
モリブデン合金TZM
TZMの物理的性質は純モリブデンの性質とほとんど異なりません。しかし少量の極めて微細な炭化物カーバイドがTZMに純モリブデンよりもさらに強い弾性を与え、高い再結晶温度と耐クリープ性を生み出します。
タングステン合金 D2M と D185
純タングステンは機械加工が難しく、低温では非常に脆弱です。そのため、金型を製造する際のタングステンには複合材料が使われます。鉄とニッケル、または鉄、ニッケル、モリブデンと組み合わせ、タングステン粒子の結束相から成る二相材料のDensimet®が生まれました。
鉄、ニッケル、そしてモリブデンで作るタングステン材料は純タングステンより機械加工がはるかに簡単になります。当社Densimet®材料は97%以上のタングステンを含有しています。
プランゼーのアルミ鋳造用入子は、おもにDensimet®185とDensimet®D2Mで製造しています。高圧鋳造には、お客様は通常、機械的強度に勝るDensimet®D2Mのほうを選ばれます。Densimet®185は、おもに重力鋳造や低圧鋳造に使用されています。ご要望があれば、モリブデン製インサートをお届けすることもできます。何なりとご相談ください。皆様のご用途に合った材料探しのお手伝いをいたします。
金型を最大限に生かすDensimet®WR
もし、長い間ご使用になっている当社Densimet®金型に摩耗・ウォッシュアウトしているところがあっても問題ではありません。Densimet®WRで肉盛溶接すると、摩耗しているところを修復し、金型の寿命をさらに何サイクルも延ばせます。Densimet®WR溶接棒は、長さ、太さともに各種あり、ご事情に応じてご注文ください。
急速な放熱、サイクルタイムの短縮
プランゼーのタングステンヘビーメタル合金Densimet®とモリブデン合金TZMの熱伝導性は、従来の鋼材の4倍にも達します。従って、重要な局面で金型が冷えるのも大幅に早く、より短い時間でより多くの鋳造サイクルをこなせます。 さらに、この急速な放熱のおかげで、キャストアルミの微細構造(デンドライトアーム間隔)も大幅に細かくなります。そして、それが強度の向上などのかたちで、お客様の製品の機械的特性の最適化に役立ちます。モリブデンとタングステン合金の高い熱伝導性は熱を迅速に消散させることによって、鋳造用入子と鋳造物の表面との温度差を小さく保っています。

同じエネルギー投入でも、当社の鋳造用インサートの表面温度は鋼材のものと比べ著しく低温です。Densimet®の高熱伝導度と併用することで鋳込みの際に鋳造用インサートに亀裂が生じる恐れがありません。
低い熱膨張
鋳込みの際には、溶融アルミがより低温の鋳造用インサートの表面と接触するので、材料中に熱疲労による亀裂が生じることがあります。その場合、とくに高圧鋳造時には、金型に亀裂が生じる可能性があります。Densimet®とTZMの熱膨張率は鋼材の約3分の1と低く、鋳造用インサートの熱疲労による亀裂の発生を回避します。Densimet®とTZMの利点:生産される鋳造物は最高の表面品質を有します。これにより、消耗が少なく保守時間を削減することができます。
硬い表面
熱間加工鋼材の表面硬度は、一定の鋳造工程後に減少してきます。リフラクトリーメタルの場合、一方では低い強度からスタートするが高度の減少は見受けられません。
従来の熱処理方法ではモリブデンとタングステンを硬化させることができないため、完成品に保護コーティングを塗布することができます。従来の炭素クロムやチタンアルミなどのPVDコーティングは、この方法に適しています。また、当社は耐食性にいかなる影響を及ぼすことなく表面硬度を1,000HV以上のHVに増加させる独自の耐食性コーティングもご提供しております。
高い耐食性
アルミが高速で注入される際、従来の鋳造用入子や鋳抜きピンはとりわけ摩耗します。しかし、モリブデンとタングステンは溶融アルミに溶解しません。Densimet®とTZM製の鋳造用入子はとくに摩耗や腐食に強くなります。それは当社の材料が溶融アルミに耐食性があり、鋳物を取り出すときにも、鋳造用入子に溶着が起こることはありません。だから、入子をより長く使うことができ、いちいちクリーニングをしなくても、すぐに次の鋳込みを行うことができます。
鋳造不良をなくすモリブデンとタングステン
溶融アルミが均一に硬化しない場合、空洞や多孔などの鋳造不良をしばしば引き起こします。これは主として、壁の厚さが多様な設計で起こる傾向があります。 この問題は、部分的に放熱量を増やす事により回避することができます。タングステンとモリブデン合金は熱間加工鋼と比較し4倍以上の放熱効率を有するため、アルミニウムの硬化を早めたい箇所を的確に冷却します。この特性により、手間のかかる付加的な冷却なしに、鋳造不良の軽減を可能にします。
モリブデンとタングステン合金の優れた熱伝導特性はお客様の工程も短縮させます。
著しく高い冷却特性=サイクルタイムの短縮。
溶融アルミが均一に硬化しない場合、空洞や多孔などの鋳造不良をしばしば引き起こします。これは主として、壁の厚さが多様な設計で起こる傾向があります。 この問題は、部分的に放熱量を増やす事により回避することができます。タングステンとモリブデン合金は熱間加工鋼と比較し4倍以上の放熱効率を有するため、アルミニウムの硬化を早めたい箇所を的確に冷却します。この特性により、手間のかかる付加的な冷却なしに、鋳造不良の軽減を可能にします。
モリブデンとタングステン合金の優れた熱伝導特性はお客様の工程も短縮させます。
著しく高い冷却特性=サイクルタイムの短縮。
加工について

モリブデンとタングステンの機械加工に関しては当社の経験にお任せください。お客様の図面や公差に従い製造された入子を提供させていただきます。しかし、もし皆様が自社で入子製造をしたい場合はDensimet®とTZMの機械加工のパラメータについて、いくつかのご提案を致します。
Densimet®は熱間加工鋼と全く同じように機械加工が可能です。しかし、下表でご提案する機械加工条件をご一読ください。モリブデン材料も同様に機械加工が可能です。しかしモリブデン材料は機械加工される際に注意が必要です。下表にある当社のガイドラインに従ってください。モリブデンの機械加工には、CERATIZITが提供するポジの切れ刃形状の超硬工具をお勧めします。
放電加工によって複雑な形状や目打ちも実現可能です。この工程では、モリブデンやタングステン合金はアノードの役割をし、作用電極はカソードの役目を果たします。当社は放電加工用の電極材料としてSparkal®電極をお勧めします。 Sparkal®電極についてはこちらをご覧ください。
TZM モリブデン合金
Hard metal indexable cutting insertsを用いたフライス旋盤加工で以下の条件を適用 | |
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すくい角 γ | ≥ + 10º |
切れ刃傾き角 | 0 through 10º |
材種 | H 216 T / H 210 T |
加工速度[m/min] | vc = 100 - 150 |
一刃送り量 [mm] | f = 0.03 - 0.10 |
クーラント | エマルジョン |
HSS tools | |
加工速度 | vc = 20 - 25 m/min |
すくい角 γ | ≥ + 10º |
クーラント | エマルジョン |
旋盤加工 | |
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工具 | CERATIZIT Maxilock-S with Code-27 und -25, hard metal grades H 216 T / H 210 T |
加工速度[m/min] | vc = 100 - 140 |
送り量 [mm/U] | f = 0.05 - 0.35 (角径による) |
加工速度[mm] | ap = 0.3 - 0.6 (刃の種類による) |
クーラント | エマルジョン |
ドリル加工:ドリル径 最大18 mm | |
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ドリルビット | HSS (冷却穴付が好ましい) |
加工速度[m/min] | vc = 10 - 15 |
送り量 [mm/U] | f = 0.05 - 0.10 |
クーラント | エマルジョン |
ネジ加工 | |
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入子 | 材種 H 10 T / H 20 T |
加工速度[m/min] | vc = 300 full cooling with emulsion |
切込 | ap = 0.002mm / pass |
酸化:空気中や最高400℃までの酸素雰囲気におけるモリブデンの酸化はごくわずかです。600℃以上で深刻な酸化または昇華が起こります。
Densimet® タングステン合金
フライス加工 | |
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CERATIZIT社のMaximilまたはHelimaxにおいて切れ刃がポジの場合で以下の条件を適用 | |
すくい角 切れ刃傾き角 材種 | 0º through + 10º 0º through + 5º H 216 T / H 210 T / AMZ |
VHM エンドミル K10種 コーティングなし | DIN 2535 HB |
加工速度[m/min] | vc = 70 - 150 |
一刃送り量 [mm] | fz = 0.03 - 0.15 |
クーラント | dry |
ドリル | |
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材種 | エンドミル K10種 コーティングなし |
ドリル径 | < 18mm |
ドリルビット | ハイスまたは超硬 ツイストドリル |
加工速度[m/min] | 超硬: 30 ハイス: ≥ 8 - 15 |
ドリル径 | ≥ 18mm |
ドリルビット | ショートドリル |
加工速度[m/min] | 超硬: 70 - 160 |
Insert taps | WCGT Sorte CTWN415 |
加工速度[m/min] | vc = 70 - 100 |
送り量 [mm] | f = 0.03 - 0.10 |
クーラント | エマルジョン |
ネジ加工 | |
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工具 | 窒化処理済みステンレス直溝ネジ切フライス 引張強さ 1400 N/mm2 |
クーラント | Cutting oil |
酸化:Densimet®タングステン合金は600℃でわずかに酸化し始めます。しかし、それが鋳造用途で問題となった事例はありません。一般的に、金型は400°Cから500°Cの間で開けられ、保護コーディングを塗布されますし、閉型中は金型内が溶融金属で満たされる為、酸化は防がれます。同時に溶融金属と酸素雰囲気にさらされるサーモウェルなどの部品は一般に酸化から保護される必要があります。
TZM | |||||||||
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T [ºC] | ρ[g/cm3] | cp[kJ/kg K] | λ[W/m K] | α[ • 10-6 1/K] | E[GPa] | Rm [MPa]* | Rp0.2[MPa]* | A5 [%]* | |
20 | 10.20 | 0.256 | 148 | 5.32 | 339 | 789 | 738 | 19 | |
200 | 10.19 | 0.266 | 137 | 5.38 | 328 | 702 | 554 | 16 | |
500 | 10.18 | 0.281 | 127 | 5.53 | 309 | 502 | 493 | 15 | |
800 | 10.15 | 0.296 | 121 | 5.73 | 289 | 445 | 440 | 15 | |
1000 | 10.14 | 0.306 | 119 | 5.88 | 274 | 386 | 374 | 19 | |
1500 | 10.10 | 0.330 | 114 | 6.30 | 231 | 150 | 140 | 40 |
*TZM ロッド 直径25mm 応力除去アニール材引張 試験データ
D2M | |||||||||
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T[°C] | ρ[g/cm3] | cp[kJ/kg K] | λ[W/m K] | α[ • 10-6 1/K] | E[GPa] | Rm[MPa] | Rp0.2[MPa] | A5[%] | |
20 | 17.3 | 0.149 | 65 | 5.3 | 360 | 990 | 670 | 18 | |
200 | 17.2 | 0.156 | 66 | 5.5 | 350 | 890 | 600 | 17 | |
500 | 17.1 | 0.160 | 68 | 5.6 | 333 | 700 | 460 | 16 | |
800 | 17.0 | 0.163 | 69 | 5.7 | 320 | 490 | 330 | 14 |
D185 | |||||||||
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T[°C] | ρ[g/cm3] | cp[kJ/kg K] | λ[W/m K] | α[ • 10-6 1/K] | E[GPa] | Rm[MPa] | Rp0.2[MPa] | A5[%] | |
20 | 18.5 | 0.145 | 90 | 5.0 | 385 | 800 | 600 | 10 | |
200 | 18.4 | 0.149 | 91 | 5.1 | 365 | 720 | 520 | 9 | |
500 | 18.3 | 0.154 | 92 | 5.2 | 350 | 600 | 420 | 7 | |
800 | 18.2 | 0.158 | 93 | 5.3 | 340 | 480 | 320 | 5 |
SKD61 | ||||||||
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T[°C] | ρ [kg/cm3] | cp[kJ/kg K] | λ[W/m K] | E[GPa] | α[ • 10-6 1/K] | Rp0.2[MPa] | Rm[MPa] | |
20 | 7740 | 0.461 | 25.0 | 217.6 | 8.7 | 1300 | 1500 | |
100 | 7720 | 0.496 | 26.0 | 212.9 | 11.5 | 1250 | 1450 | |
300 | 7670 | 0.568 | 28.9 | 198.2 | 12.2 | 1100 | 1300 | |
500 | 7600 | 0.550 | 29.5 | 178.9 | 12.9 | 750 | 950 | |
700 | 7540 | 0.610 | 29.2 | 158.2 | 13.2 | 400 | 550 |
最適な合金を製造する3つの製法
プランゼーは 高温含浸、液相焼結、バックキャストのいずれの方法でも、ずば抜けた特性を持つ高性能複合材料をお作りいたします。プランゼーのコンピタンスセンターPlansee Composite Materialsは、密度、耐食性、熱伝導性、熱膨張率、耐温度性、機械的安定性など、多様な材料特性を組み合わせて複合材料を開発しています。
プランゼーは医療テクノロジー、ファウンドリー、自動車などのさまざまな産業のお客様と緊密に協力し、皆様のアイデアを現実にしています。さあ、皆様もごいっしょに!
