放射線治療は、腫瘍細胞の標準的な非侵襲性治療です。しかしなはら、周囲の健康な組織を傷つけずに、がん細胞を破壊するのに十分な線量を投与することは困難です。
マイクロビーム放射線による治療は、まさにこうした健康な細胞を傷つけるのを回避するために開発されました。通常より最大20倍高いマイクロメーター幅の高線量ピークの超短パルスを標的化したがん細胞に数ミリ秒間照射します。抗腫瘍効果は従来の高線量放射線治療に匹敵する一方、腫瘍周辺の健康な組織を破壊するリスクは低下します。投与量効果として知られるこの効果は、1959年に中性子での照射中に初めて観察され、数年間の研究を経て検証されました。そして従来の放射線治療の確実な代替治療として、マイクロビーム治療の開発へとつながりました。
しかし、この形式の放射線治療は、未だ膨大かつ高額な粒子加速器(直線加速器)を使用した臨床前試験の一部でしか実現されていません。マイクロビーム放射線治療の臨床応用性を拡げるには、そのコストと労力を大幅に削減する必要があります。これは、回転陽極を装備したX線エミッターにより実現することができます。しかしながら、現在市場に出ている回転陽極で、マイクロビーム治療システムに必要な超高エネルギーX線ビームを生成できるものはありません。
Technical University of Munich (TUM)のSchool of Engineering and Designは、こうした現状を変えため、研究パートナーと協力して、マイクロビーム放射線治療システム用に回転陽極を装備したX線源を開発しています。プロジェクトの実現性を評価するため、TUMでは、20秒パルスで90 kWの高熱回転陽極処理量を20分に1回繰り返す試作システムに取り組んでいます。
プランゼーは、TUMからこれまでにない規模の回転陽極X線管の構築を委託されました。こうした高性能回転陽極の製作は、チームに特定の課題を提示することになりました。その結果、試作の重量はほぼ14 kg、直径は240 mm、構造物の高さは50 mm以上、そのすべてがおよそ24 kgのブランク材から製作され、かつてプランゼーが構築した中で最大かつ最重量の陽極となりました。
これはこれまでで最大の回転陽極X線管で使用され、それに使用されるドライブは、最大15,000 rpm (250 Hz)の陽極回転速度を可能にする液体金属滑り軸受に基づいています。最終的なマイクロビーム放射線治療システムは、回転陽極で1 TW/m2のエネルギーを処理できる必要があり、これは現在の陽極設計に基づく43,000 rpmの回転速度に相当します。
この研究プロジェクトに関与したパートナーの詳細については、以下を参照してください。
Rechts der Isar Hospital, Munich
School of Engineering and Design, TUM (development of rotating x-ray anode)
Johannes Gutenberg University Mainz
Forschungszentrum Jülich Research Center
この研究プロジェクトに関する詳細は、TUMのプレスリリースをご覧ください。